ECサイトの売上が伸びないとき、制作会社に相談すべきか、広告運用会社に相談すべきかで迷う小売事業者は少なくありません。見た目の改善だけでは広告費が無駄になり、広告だけを強めても購入導線が弱ければ成果は頭打ちになります。大切なのは、制作と広告を別々の作業として扱わず、商品理解、在庫、粗利、顧客対応、リピート施策まで含めて同じ方向を向ける体制を選ぶことです。
この記事で分かること
- 小売ECで起きやすい課題の整理方法
- EC制作と広告運用をつなげる考え方
- 外注前に確認すべき体制・費用・運用項目
- 売上改善につなげる具体的な進め方
EC制作と広告運用はなぜ分断されやすいのか
制作会社はデザイン、システム、表示速度、商品ページ、決済導線を見ます。一方で広告運用会社は配信面、入札、クリエイティブ、計測、広告費に対する売上を見ます。どちらも重要ですが、会議体や責任範囲が分かれると、売れない原因がサイト側なのか広告側なのか判断しづらくなります。
小売では、季節商品、欠品、値引き、店舗イベント、チラシ、SNS投稿が売上に大きく影響します。こうした現場情報が制作と広告に届かないと、広告では売れ筋を押しているのに商品ページでは魅力が伝わらない、サイトでは特集を作ったのに広告では別の商品を配信している、というズレが起きます。
小売事業者が先に整理すべき5つの情報
発注前に整理したいのは、売りたい商品、粗利率、在庫の安定性、購入までの不安、既存顧客のリピート理由です。これらが曖昧なままサイト制作や広告運用を始めると、きれいなページやクリック数は増えても利益につながりません。
特に粗利率は重要です。広告費をかけてよい商品と、自然検索やメール、LINEで育てるべき商品は違います。ギフト商材、定期購入商材、実店舗への来店を促したい商品でも設計は変わります。
- 売上に直結する情報から先に整える
- 社内で判断することと外注することを分ける
- 改善後に確認する数字を決めておく
一体型支援が向いているケース
ECサイトを新しく作る、Shopifyへ移行する、広告配信を同時に始める、商品点数が多くカテゴリ設計から見直したい場合は、制作と広告を一体で見られる支援先が向いています。商品ページの情報設計、広告用LP、計測タグ、カート導線、メール施策を同じ前提で進められるためです。
一体型支援では、月次レポートも単なるクリック数ではなく、商品別の売上、購入率、客単価、リピート、在庫状況まで含めて見ます。制作側の改善と広告側の改善が同じテーブルで議論できることが強みです。
分業が向いているケース
すでに強い制作チームが社内外にあり、広告だけ専門性を足したい場合は分業でも問題ありません。ただし、広告運用会社が商品ページの改善提案を出せるか、制作会社が広告の着地ページ改善に協力できるかは確認が必要です。
分業では、誰が計測環境を管理するのか、誰がLPの修正を行うのか、誰が商品画像やコピーを準備するのかを最初に決めておくと、改善のスピードが落ちにくくなります。
良い支援会社を見極める質問
初回相談では、広告費の目安だけでなく、利益が残る商品設計、購入前の不安、返品や問い合わせ、在庫切れ時の運用まで質問してくる会社を選びたいところです。小売ECは広告管理画面だけでは判断できないことが多いからです。
また、過去実績を聞くときは業種名だけでなく、どの段階から関わったのか、何を改善したのか、制作と広告のどちらを担当したのかまで聞くと実力が見えます。
契約前に決めるべき連携ルール
定例会の頻度、レポートの形式、修正依頼の窓口、緊急時の対応、広告予算変更の承認者を決めておきます。小売ではセールや欠品が突然起きるため、連絡の遅れがそのまま機会損失になります。
制作会社と広告運用会社を分ける場合は、両社が参加する定例会を月1回でも設けると効果的です。広告の数字からサイト改善を決め、サイト改善の内容を広告クリエイティブへ反映する流れが作れます。
まとめ
EC制作会社と広告運用会社の選び方は、料金や知名度だけで決まりません。小売事業者に必要なのは、売りたい商品と利益構造を理解し、制作と広告をつなげて改善できる体制です。
まずは現状の売上、広告費、商品別粗利、購入導線の課題を整理し、それをもとに相談先の得意領域を見極めることが、失敗しにくい発注につながります。
発注前に社内で決めておきたいこと
小売ECの制作や広告支援を外部に相談する前に、社内で決めておきたいことがあります。第一に、売上だけでなく利益をどこまで重視するかです。広告経由の売上が増えても、粗利が薄い商品や返品が多い商品ばかり売れているなら、事業としては苦しくなります。売りたい商品、売ってよい商品、広告費をかけるべき商品を分けて考えることが大切です。
第二に、誰が最終判断をするかです。EC担当者、店舗責任者、商品部、経営者、広告担当者の意見が分かれると、制作会社や広告運用会社は動きにくくなります。価格変更、キャンペーン開始、広告予算、ページ公開、クーポン発行など、判断が必要な項目ごとに承認者を決めておきましょう。
第三に、社内で用意できる素材を確認します。商品写真、使用シーンの写真、レビュー、店舗スタッフのコメント、よくある質問、配送条件、返品条件、保証内容がそろっているほど、外注先は具体的な改善を進めやすくなります。素材がない場合は、制作費や期間に撮影・原稿作成の工数を含める必要があります。
第四に、短期で伸ばしたい数字と中長期で育てたい資産を分けます。短期では広告やキャンペーンが効きやすく、中長期では商品ページ、カテゴリ、メール、LINE、レビュー、会員施策が効いてきます。どちらか一方ではなく、今月の売上と半年後の利益を同時に見られる計画にすると、施策の優先順位を決めやすくなります。
制作会社・広告運用会社に共有したい資料
相談時に完璧な資料を用意する必要はありません。ただし、次の情報があると、初回相談の段階から具体的な提案を受けやすくなります。
- 直近3か月から12か月の売上、注文数、客単価、広告費
- 商品カテゴリ別の売上、粗利率、在庫状況、季節性
- アクセス解析、広告管理画面、EC管理画面で見ている主要な数字
- 問い合わせ、返品、キャンセル、低評価レビューで多い内容
- 現在使っているECカート、決済、配送、在庫管理、CRM、メール配信ツール
- 過去に実施したキャンペーン、広告、サイト改修の結果
資料を共有するときは、数字の良し悪しを隠す必要はありません。むしろ、うまくいっていない数字や現場が困っている作業が分かるほど、外注先は改善の優先順位を付けやすくなります。小売ECでは、表面的な売上よりも、利益、在庫、顧客対応、運用負荷まで含めて見ることが重要です。
また、広告アカウントや解析ツールを外注先に見せる場合は、閲覧権限から始めると安心です。管理者権限を渡す前に、どの範囲まで操作してよいか、変更前に承認が必要かを決めておくと、事故を防ぎやすくなります。
90日で進める改善ロードマップ
1か月目:現状把握と土台づくり
最初の1か月は、大きな変更よりも現状把握を優先します。売上、広告費、購入率、客単価、商品別粗利、在庫、問い合わせ内容を整理し、どこに一番大きな損失があるかを見ます。計測タグや購入完了イベントが正しく動いているかも確認します。
この段階で、すぐ直せる改善も進めます。送料や返品条件の見せ方、購入ボタン周辺の情報、スマートフォンでの表示、問い合わせフォームの項目、広告LPの訴求などは、比較的短期間で改善しやすい箇所です。
2か月目:優先商品のページと広告を改善する
2か月目は、売上や利益への影響が大きい商品カテゴリに絞って改善します。商品ページの説明、画像、レビュー、FAQ、比較表、関連商品の導線を見直し、広告の訴求とページ内容をそろえます。
広告では、すべての商品に均等に予算を配るのではなく、在庫が安定し、粗利があり、購入後の満足度が高い商品へ優先的に配分します。広告の結果は、クリック数だけでなく、購入、問い合わせ、客単価、返品状況まで確認します。
3か月目:勝ちパターンを横展開する
3か月目は、反応が良かった商品ページ、広告文、画像、FAQ、メールの内容を他カテゴリにも展開します。小売ECでは、ひとつの成功パターンを見つけて終わりではなく、似た商品や季節企画へ広げることで効果が大きくなります。
同時に、継続運用の体制も整えます。月次で見る数字、週次で直す箇所、緊急時の連絡ルール、制作会社と広告運用会社の役割を決めておくと、改善が属人化しにくくなります。
失敗しやすい進め方と回避策
| 失敗しやすい進め方 | 起きる問題 | 回避策 |
|---|---|---|
| 広告費だけを増やす | 商品ページや購入導線の問題が残り、費用対効果が悪化する | 広告開始前に主要商品のページと計測を確認する |
| デザインだけを刷新する | 見た目は変わっても購入前の不安が減らない | 送料、返品、レビュー、比較、FAQを合わせて改善する |
| 外注先へ丸投げする | 商品や粗利の判断ができず、施策がずれる | 社内で売りたい商品と利益条件を決める |
| 数字を見ないまま続ける | 改善した理由と結果が分からなくなる | 変更日、内容、確認する数字を記録する |
特に避けたいのは、制作と広告を別々に判断することです。広告の成果が悪いとき、原因は広告文ではなく商品ページにあるかもしれません。購入率が低いとき、原因はデザインではなく送料や返品条件への不安かもしれません。数字と現場の声を合わせて見ることで、誤った改善を減らせます。
もうひとつ大切なのは、改善を一度で終わらせないことです。ECサイトは公開してからが本番です。商品、季節、広告媒体、競合、顧客の期待は変わるため、定期的に見直す前提で体制を作りましょう。
小売ECで確認したい改善チェックリスト
| 確認項目 | 見るポイント | 改善の方向性 |
|---|---|---|
| 商品ページ | 特徴・サイズ・送料・返品条件が分かるか | 購入前の不安を減らす |
| 広告 | 売りたい商品と配信内容が合っているか | 粗利と在庫を見て予算を配分する |
| 計測 | 購入・カート追加・問い合わせが見えるか | 改善後の変化を追える状態にする |
| 運用 | 社内と外注先の役割が決まっているか | 定例会とタスク管理を用意する |
EC制作・広告運用の相談先を探している小売事業者様へ
おこじょデザインシステムでは、ECサイト制作、Shopify構築、購入導線の改善、広告用ランディングページ、Google広告・SNS広告の運用改善まで、小売事業者の売上づくりを一体で支援しています。
「サイトを作ったが売上につながらない」「広告費をかけても利益が残りにくい」「店舗とECの運用が分断されている」といった段階でも、現状整理からご相談いただけます。
よくある質問
EC制作会社と広告運用会社は同じ会社に頼むべきですか?
新規構築やリニューアルと広告開始を同時に進めるなら、同じ会社または密に連携できる体制が向いています。すでに制作体制が安定している場合は広告だけ外部化しても構いません。
広告運用だけ依頼しても売上は伸びますか?
商品ページ、決済導線、送料表示、レビュー、在庫などに問題がある場合は広告だけでは伸びにくいです。広告開始前に最低限の購入導線を点検することが重要です。

コメント